大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(行ウ)48号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕法人税法上、課税の対象となる所得とは、当該事業年度の益金の額から同年度の損金の額を控除した金額とされ、右益金の額は、別段の定めがあるものを除き、資本等取引以外の取引にかかる当該事業年度の収益の額である旨定められている(同法二二条一、二項)。そして、右の当該事業年度の収益および損金の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるべきものである(同条四項参照。なお、同項は本件には適用されないが、その趣旨は本件においても同様に解するのが相当である。)。したがつて、法人の所得の算定にあたり、当該収益がどの事業年度におけるものであるかを決定するについても、公正妥当な会計処理の基準に従うべきものと解するのが相当である。ところで、近代企業にあつては、複雑な取引形態の下に多数の債権債務が同時に併存する実情にあるため、会計処理上いわゆる現金主義によつてはとううてい客観的かつ正確な損益を把握することができないから、これによることは適当でなく、いわゆる権利確定主義ないし発生主義によるのが公正妥当な会計処理の基準に従う所以であつて、この理は原告のような宅地建物取引業者の収益、損金についても妥当するものということができる。

そこで、次に、原告のような宅地建物取引業者の仲介手数料ないし報酬(収益)および支払手数料(損金)がいかなる時点において確定するかについて検討する。

宅地建物取引業者は商人であるから、依頼者に対し報酬請求権を有する(商法五一二条)が、不動産取引の仲介は、民事契約の仲介ではあつても、これを商事仲立と区別すべき理由がないから、特別の事情のない限り、商事仲立に関する商法五五〇条一項を類推適用して、仲介が成功したとき、すなわち、当事者間の不動産取引の契約が有効に成立したときに、この報酬請求権が発生するものと解すべきである。そして、右報酬の額は、これについて約定があれば、宅地建物取引業法一七条に基づいて定められた報酬規定による最高報酬額の限度で約定に従うべきことは、いうまでもない。

したがつて、宅地建物取引業者の報酬請求権は、仲介にかかる契約が有効に成立し、かつ、報酬額が具体的に約定されて、これを行使しうる状態になつたとき、確定するものと解すべきである。

ところで、原告は、この点に関し、会計原則上の保守主義の原則を引用し、未収収益についてはこれを益金に計上する必要がない旨主張する。なるほど、いわゆる保守主義ないし安全性の原則は、企業財政の安全をはかるために尊重されるべきであるが、課税所得の計算は、負担の適正、公平を期するために、権利確実主義の基準によるべきことは既述のとおりであつて、右保守主義の原則も、これによつて限定される範囲において認められるべきものと解するのが相当である。

また、原告は、仲介手数料請求権を仲介にかかる契約成立時において収益として計上すべきものとする課程処分は、請負報酬請求権を工事完成時に計上すれば足りるとする取扱いに比べて、課税上不当な差別をするものであつて、憲法一四条に反する旨主張するが、右両契約における取扱いは、いずれも権利確定主義によつて損益を計上すべきものとする点では何ら差別はなく、ただ仲介契約と請負契約との契約内容の相違に基づき事実上異なる結果となつているに過ぎないから、憲法一四条に反するものといえないことは明らかである。

(杉山克彦 加藤和夫 石川善則)

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